
住宅ローンを契約した当初は「毎月きちんと返済できる」と思っていても、収入の減少(リストラや病気など)や予想外の出費により、返済が困難になる可能性はゼロではありません 。特に30代の働き盛り世代でも、転職や出産、景気の変動などで住宅ローンの返済に行き詰まるケースは珍しくありません。そうした住宅ローンの返済にお困りの方は、「競売」による強制的な売却の前に「任意売却」という方法で問題解決を図れる場合があります。
この記事では、岡山県岡山市で不動産売買を手がける Torus不動産合同会社 が、不動産の任意売却とはどのような売却方法なのか、そして競売との違いやメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。住宅ローンの返済に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
不動産の任意売却とは何か?
まず、不動産を売却する一般的な方法としては、不動産会社に仲介を依頼して買い手を探す「仲介(媒介)」や、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」があります。しかし、住宅ローン残高との関係で特殊な売却方法を選ばざるを得ないケースも存在します。それが「任意売却」や「競売」と呼ばれる方法です。任意売却とは、簡単に言えばローン返済が難しくなったときに選択肢となる売却方法で、競売とは異なり所有者の合意のもと通常の市場で売却する手続きです。
任意売却や競売を検討する状況として代表的なのは、次のような条件に該当するときです。
- 住宅ローンの返済を継続できない場合(長期の滞納や今後の支払い見通しが立たない状態)
- 売却しても住宅ローンの残債が残ってしまう場合(不動産を売ってもローン完済に足りない)
住宅ローンを契約すると、金融機関は万一契約者が返済を滞納した場合に備えて、その不動産に抵当権(ていとうけん)という担保権利を設定します。抵当権とは、ローン債務者が返済不能に陥った際に、金融機関がその不動産を競売にかけて強制的に売却し、貸したお金の回収に充てることができる権利のことです。
競売は裁判所を通じて行われ、所有者(ローン借り手)の同意なく物件がオークション形式で売却されます。一般的に競売物件の落札価格は市場相場の5割~7割程度にとどまるケースが多く 、売却代金もローン残債の一括返済に充てられるため、競売後もローンが完済できず多額の借金が残ってしまうリスクがあります。一方で「任意売却」は、金融機関(債権者)と債務者(物件所有者)の合意のもと、物件を通常の不動産市場で売却する方法です。裁判所が主体となる競売とは異なり、所有者自らが不動産会社に仲介を依頼して売却活動を行い、売却代金でローンの返済に充てる点が特徴です。もちろん任意売却を行うには債権者である金融機関の同意が必要ですが、同意さえ得られれば通常の売却と同じプロセスで進められるため、競売に比べ様々なメリットがあります。
任意売却と競売の違い(メリット・デメリット比較)
任意売却と競売は、どちらもローン残債が残る不動産を売却するときの方法ですが、具体的な手続きや結果に大きな違いがあります。主な違いをまとめると次のとおりです。
任意売却 | 競売(強制売却) | |
---|---|---|
抵当権 | 抹消可能(債権者の同意必須) | 抹消可能(競売落札と同時に抹消) |
売却価格 | 市場価格に近い価格で売却可能 | 市場価格より低い価格になりやすい |
住宅ローン残債 | 売却後の残債は分割返済の相談可 | 残債は基本的に一括返済(免除なし) |
費用負担 | 持ち出しほぼ無し(引っ越し費用も捻出可) | 引っ越し費用は自己負担(持ち出し発生) |
競売(強制売却)は裁判所によるオークションのため、売却価格が低く抑えられてしまいがちです。その結果、ローン残高を売却代金で賄いきれず多額の残債が残るリスクがあります。一方、任意売却であれば市場相場に近い価格で売却できるため、残債をなるべく減らせるメリットがあります。また任意売却では、債権者と交渉することで売却後の残債を分割で返済する合意も得られるため、競売後のように即座に多額の一括返済を求められる心配も少なくなります。
それでは、任意売却を選ぶことによって得られる具体的なメリットを順番に見ていきましょう。
任意売却のメリット1:抵当権を外して売却できる
通常、住宅ローンが残っている不動産を勝手に売却することはできません。買い手の立場から見ても、抵当権付き(=ローン滞納時に競売され得る)物件を購入するのは大きなリスクだからです。そのため、ローン残債が残っている物件を市場で売却するのは困難です。しかし任意売却なら、債権者である金融機関に依頼して抵当権を抹消してもらった上で売却することが可能です。抵当権が外れれば買主も安心して購入できるため、スムーズに売却手続きを進められます。
任意売却のメリット2:市場に近い価格で売却できる
任意売却は通常の仲介売却と同じように市場で買主を探すため、適正な市場価格で物件を売却できる可能性が高いです。前述のように競売では市場相場より大幅に低い価格で落札されてしまうケースが多く 、債務者にとって不利ですが、任意売却であればできるだけ高く売ってローンの残りを減らすことができます。少しでも高く不動産を売却できるのは、債務者にとって大きなメリットと言えるでしょう。
任意売却のメリット3:売却後の残債を分割返済できる
競売になった場合、売却後に残った住宅ローンの返済は一括返済を求められるのが通常です。しかし一括返済できる余力があるなら、最初から返済に困る事態にはなっていないはずです。結局、競売後に残債が多額であれば自己破産せざるを得ないケースも少なくありません。任意売却であれば、事前に金融機関と話し合うことで残った債務を無理のない範囲で分割返済していく合意を得られる可能性があります。毎月の返済計画を改めて立て直すことで自己破産を避け、信用情報への深刻なダメージを防ぐことができる点も大きなメリットです。
任意売却のメリット4:引っ越し費用などの持ち出しを減らせる
競売で物件が落札された場合、売却にかかる諸費用(手数料等)は落札代金から差し引かれますが、引っ越し費用についてはそこから捻出することができません。つまり、新居への転居費用は自分で用意する必要があり、金銭的な負担が発生します。一方、任意売却であれば債権者(金融機関)の合意により、最大で30万円程度の引っ越し費用を売却代金から確保してもらえるケースがあります 。物件がマンションで管理費・修繕積立金の滞納分がある場合も、売却代金から精算して残債に組み込んでもらえることが多く、手元資金の持ち出しを極力減らせるのも任意売却の利点です。
任意売却のデメリット(注意点)
メリットの多い任意売却ですが、覚えておくべき注意点やデメリットもあります。特に重要なポイントは次の2つです。
- 誰もが必ず任意売却を選択できるわけではない
- 通常の売却と同様に手間と時間がかかる
任意売却は債権者の同意が不可欠です。そのため、ローンの借り手が「競売より任意売却がいいから任意売却にしよう」と自由に選べるものではなく、金融機関側が競売を選択した場合は基本的にそれに従う必要があります。ただし競売の申し立て後でも、買い手が見つかりさえすれば競売手続きを取り下げてもらい任意売却に切り替えることも可能です。しかし競売開始の通知が届いてからでは時間との勝負になり、買い手探しや手続き完了までに猶予が少なくなるため注意が必要です。
また、任意売却は所有者自身が主体となって売却活動を行う点にも留意しましょう。競売では裁判所が主導で手続きしてくれるため所有者は何もせずとも進みますが、任意売却の場合は通常の不動産売却と同様に自分で動く必要があります。不動産会社に仲介を依頼して物件の査定や相場調査を行い、売却活動(広告掲載や内覧対応など)にも協力し、買主との売買契約締結・物件引き渡しまで一連のプロセスを踏まなくてはなりません。時間と手間がかかる点はデメリットですが、その労力によって競売より有利な条件で売却できると考えれば、前向きに取り組めるでしょう。
任意売却を成功させるためのポイント
住宅ローンの返済が厳しくなり、「物件を売却してローンを清算したいが残債が残りそうだ」という状況に陥ったら、できるだけ早めに金融機関へ相談することが肝心です。任意売却を行うには金融機関の協力が不可欠であり、債権者も債務者から早期に相談を受けた方が対応策を検討しやすくなります。滞納が長期化してすでに多額の延滞利息や滞納額が膨らんでいる場合、金融機関としても「任意売却を認めてもどうせまた滞納するのではないか」と判断し、任意売却に応じてもらえなくなる可能性が高まります。
早めに相談すれば、任意売却以外の解決策(例:返済計画の見直しや一時的な返済猶予措置など)を提案してもらえる場合もあります。追い詰められてから高金利の消費者金融などに手を出してしまうと多重債務に陥り、かえって問題が深刻化しかねません。そうなる前に、できるだけ早期に専門家に状況を打ち明け、適切な対策を講じることが大切です。
幸いTorus不動産は岡山市を中心に地元密着で住宅ローン問題の相談に対応しています。お一人で悩みを抱え込まず、早めに信頼できるプロに相談することで、任意売却という選択肢を含め最善の解決策を一緒に見つけましょう。
まとめ
人生には就職、結婚、出産、住宅購入といった様々なライフイベントがあり、特にマイホームの購入には多額の費用がかかるため住宅ローンを利用するのが一般的です。金融機関はローンを貸し出す際に不動産へ抵当権を設定し、債務者が返済不能になった場合に備えます。ローンを最後まで完済できれば抵当権は抹消できますが、途中で返済が行き詰まり残債がある状態では抵当権を外せません。抵当権付きの不動産は通常の売却が難しいため、ローン返済が困難な場合には競売または任意売却という手段で売却することになります。
任意売却と競売では手続きの主体や売却価格、残債処理の方法に大きな違いがあります。一般的に任意売却の方が競売よりも債務者に有利な結果を得やすいため、可能な限り競売ではなく任意売却で解決を図ることが望ましいと言えるでしょう。そのためにも、返済に困った時点で早めに金融機関や不動産の専門会社へ相談し、任意売却の道筋をつけることが重要です。
岡山県岡山市の Torus不動産合同会社 では、住宅ローン返済にお困りの方への任意売却のご相談を随時受け付けております。地元密着の不動産会社として、お客様一人ひとりの状況に寄り添いながら最適なサポートを提供いたします。住宅ローンの返済に不安を感じたら、お早めにお気軽にご相談ください。私たちと一緒に、最善の解決策を見つけましょう。